当院の院長は、口腔外科を専門としています。長年の研究から得た豊富な知識と技術で、お口の中のどんな小さな問題でも見逃しません。
一般的な歯科医師が口腔ガンの症例を見る経験は生涯に3~4例だと言われていますが、当院では昨年1年間で3例の口腔がんを発見しました。これも当院の病変に対する意識の高さではないでしょうか。
幅広い症例を取り扱う口腔外科ですが、当院で治療を行った病変の中から、一部をご紹介します。
歯肉メラニン沈着
健康な歯肉はピンク色をしていますが、黒ずんでしまうことがあります。その原因のほとんどは、メラニン色素の沈着によるものです。メラニン色素の沈着は、口呼吸や喫煙といった習慣によって引き起こされます。
メラニン色素の除去には、レーザー照射を行います。歯科用レーザーを照射することで、メラニン色素を含む歯肉の顆粒層までを除去します。ほとんどの場合、数回の治療でピンク色の健康な歯肉が取り戻せます。
舌小帯強直症
舌小帯とは、舌と顎骨を結んでいる組織です。この舌小帯が前歯のすぐ近くまで続いていると、舌の動きが制限され、発音障害や咀しゃく障害を起こすことがあります。それが舌小帯強直症です。
舌小帯強直症では、舌小帯の一部を切除して適切な長さにする必要があります。局所麻酔を行い、レーザーメスで切除するので、出血や痛みはほとんどありません。舌小帯強直症で嚥下障害を起こしている場合、乳児期であっても手術を行います。
歯ぎしり・食いしばり
歯周病は歯の周囲の組織が炎症を起こす病気ですが、その原因のひとつに歯ぎしりや食いしばりがあります。歯ぎしりや食いしばりで歯肉や骨に無理な力がかかることで、歯周病を急速に悪化させてしまうのです。
歯ぎしりや食いしばりの場合、お口の中を保護するマウスピースを着用してのリハビリ治療を行います。マウスピースを着用することで、歯にかかる無理な力を軽減します。また、自己暗示療法を行う場合もあります。
顎関節症
口を開くときにカクンと音がする、口が開けにくい、顎関節が痛むといった症状の方は、顎関節症に罹っている疑いがあります。顎関節症では、あごの関節だけでなく周囲の筋肉にも無理な力がかかってしまいます。しかしその原因はひとつではなく、いくつもの要因が重なって起こることが多いので、治療も原因に合わせて行わなければなりません。
顎関節症の要因としては、うつぶせ寝、ほお杖、姿勢の悪さ、歯ぎしり、食いしばり、日常の咀しゃく習慣、ストレスなどが考えられます。また、事故などで強くあごを打ったことから発症することもあります。
当院では、顎関節にレーザー照射を行い、炎症を抑える治療を行っています。また、筋弛緩薬や消炎鎮痛剤、および抗不安薬などを処方することもあります。そのほかに、原因に合わせた筋マッサージや筋ストレッチ、開口訓練、生活習慣の改善アドバイスなどを行っています。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は、寝ている間に何らかの原因で気道が塞がり、呼吸ができない時間が何度も起きてしまう病気です。十分な睡眠が取れないので、日中に眠気や倦怠感などを感じます。それだけではなく、高血圧や心筋梗塞、脳卒中などを発症するリスクも高まると言われています。
睡眠時無呼吸症候群の原因はさまざまです。肥満によって首部分の脂肪が厚くなることが主な原因だと考えられてきましたが、あごや鼻、扁桃腺などの構造によって、肥満でなくても発症します。また、日本人は欧米人に比べてあごが小さく、睡眠時無呼吸症候群を起こしやすいことがわかっています。
2004年から、睡眠時無呼吸症候群と診断された患者さまは、歯科医院でのマウスピース治療が可能となりました。睡眠と歯科領域に関しては、医科・歯科の連携がすでに始まっています。
まずは、提携施設にて1泊2日入院で、睡眠中の無呼吸の状況、酸素飽和状態や体動、眠りの深さを調べた上で、適切な治療を提案させていただきます。
ドライマウス(シェーグレン症候群)
主な症状は、唾液の分泌が少なくなりお口の中が乾くことですが、ほかにも、お口の中がヒリヒリする、入れ歯がこすれて傷ができたり外れたりしやすい、話しづらい、食べ物の味がわかりにくい、目の乾燥、鼻腔の乾燥、息切れ、発熱、関節痛、湿疹といったさまざまな症状が現れます。
原因は、服用薬による副作用によるもの、遺伝によるもの、免疫力の低下、ウイルスやストレスといった外的要因、女性ホルモンの減少などで、どれか1つではなく、いくつかの要因が重なって発症します。
シェーグレン症候群の診断には、唾液分泌量の検査、涙の分泌量の検査、血液検査などを行わなければなりません。いずれも当院にて以上の検査を行い、シェーグレン症候群と診断された場合、免疫内科の医師と連携しての治療が必要です。
治療方法としては、水分摂取法、唾液分泌促進薬、唾液腺マッサージ、お口の周りの筋肉を動かすことでの分泌促進法、睡眠中または起床時のお口の中の乾燥に対しては、夜間にお口の中に装着するプレート法など、症状に応じて対応いたします。